世界が注目!インドの物流事情と急速な市場拡大
インドの物流が世界的に注目を集めているのをご存知でしょうか。中国に続く第二の巨大マーケットとして進化してきたインドの物流市場。その成長率は中国を大きく上回っており、世界でも特に活気あるマーケットとされています。そこで今回はインドの物流事情と、注目を集めるその背景をご紹介します。
大きな可能性を持つインドの物流市場
なぜ世界の注目がインドに集まっているのでしょう。
インドには広大な国土と膨大な人口を抱え、急速な経済成長を続けながら消費大国へと変貌を遂げつつあります。こうした背景から、日本も含め世界中の企業がインドに拠点を構え進出しています。
インドの急速な発展に伴い、市場規模を拡大しているのがインドの物流部門です。インドのCII物流研究所(CII Institute of Logistics)の所長、K.V. Mahidhar氏は、インドの物流市場についての予測を発表しています。これによると、インドの物流市場規模は2013年から2020年の7年間で、1,100億ドルから2,000億ドルにまで達するとしています。
このように、大幅な成長が見込まれるからこそ、インドの物流市場が世界から注目を集めているのです。
インドの物流市場が成長している理由
2010年以前の予測では、「2030年にはインドの人口が中国を超え世界一になる」とされていました。しかし、人口増加が予想を上回る加速度を見せており、2016年には「2020年にはインドの人口が中国を超え世界一になる」との予測が発表されました。このような急速な人口増加が、インドの物流市場の拡大に大きく影響していると考えられます。人口増加と物流市場、これらの結びつきに深く関わっているのが、EC市場とコールドチェーンの二つです。
EC市場の拡大
日本貿易振興機構(JETRO)による2017年の「インドのeコマース市場調査」によると、インドのインターネット利用者数は2016年には4億6,200万人だったのが、2020年には約1.4倍の6億6,500万人に増加するであろうと推定しています。さらに、これと連動してEC市場も拡大し、2016年には311億ドルだったものが、2020年には1,031億ドルと、3倍以上に伸びると予測しています。
同調査の、国別のオンライン小売サイトの成長ランキングでは、2013〜2015年の3年間において、米国が12%、中国が23%であるのに対し、インドは68%と爆発的な成長率を見せています。
このように、人口増加に伴いインターネット利用者数も増加、同時にEC市場も大きく伸びていることがわかります。EC市場は物流なくしては成り立ちません。EC市場の伸びは、そのまま物流市場の伸びに直結していると考えられるのです。
コールドチェーンの拡大
もう一つ、人口増加と物流市場の拡大に深く関わっているのが、コールドチェーンの発達です。
コールドチェーンについては、こちらの記事でご紹介しています。
インドでは急速な人口増加に伴い、「食の流通」がひとつの課題となりました。たくさんの人に十分な食品を供給するためには、コールドチェーンの発達が欠かせません。こういった事情から、インドではコールドチェーンの需要が高まっているのです。
インドの調査会社CRISIL Researchのレポート(2014年6月時点)によると、インドのコールドチェーン市場は2017年に2,480億ルピー(35億6,400万ドル)でした。これが2022年には4,720億ルピー(67億8,300万ドル)にまで成長するとしています。このように、コールドチェーン市場の成長が大きいことも、物流全体の市場規模を拡大させている要因のひとつなのです。
インド物流の課題と注目が集まる背景
こういった理由から急速な成長を見せるインドの物流ですが、課題も多く残っています。
インドには六つの巨大経済圏があり、それらが鉄道輸送・道路輸送で結ばれています。しかし、広大な国土を結ぶこうした輸送経路や荷受けの体制に課題があり、物流コストを増大させているのです。具体的には、主要経済圏を結ぶ幹線道路は整備が進んでいるとはいえ、まだ良い状態とはいえず、渋滞も頻発しています。また、鉄道輸送に関しても旅客列車との併用が多く、スケジュールが安定しません。
このように、物流市場の拡大にインフラ整備が追いついていない現状がある一方で、物流発展に伴うインフラ事業も需要が高まっています。このような部分のソリューションも含めて、インドの物流が持つ伸びしろに注目が集まっているのです。
日本企業各社もインド物流へ
こうした状況に対し、日本の物流関連企業も注目しています。
日立物流は2019年度から2021年度までの中期経営計画として、インドを欧州・米国と並ぶ物流強化地域として挙げています。インドを中国に並ぶ巨大マーケットと見て、複数の倉庫を作り自動車部品を中心に企業向け物流網を築く方針です。
システム面からインドの物流市場に名乗りを上げているのがNECです。RFID(※1)を活用した物流可視化システムにより、コンテナの通過時間や場所を追跡確認、ビッグデータを活用した分析・評価も可能となります。このように、物流インフラを高度化することでインドの経済発展に貢献するとしています。
※1 RFID : RFタグのデータを、電波を用いて読み書きするシステム
RFIDについては、こちらの記事でご紹介しています。
物流機器大手ダイフクは、インドの物流機器メーカー、ヴェガ・コンベヤーズ&オートメーションを買収し、現地での生産体制整備に乗り出しています。搬送装置や自動倉庫に強みを持つダイフクは、インド市場においても2017年に34億円と、前年比1.4倍の売上高を記録しました。インドの物流は自動化ニーズがさらに高まると見て、生産体制を整えています。
物流面からインドの医療近代化への貢献を目指すのが、鴻池運輸です。同社の打ち出した「ハイブリッドメディカルセンター構想」では、医療関連製品の物流管理と同時に滅菌・洗浄などのメンテナンスサービスも行います。これによりインドの医療物流ネットワークを構築し、日系医療関連企業の進出も後押しする考えです。
このように、国内企業各社はさまざまな角度からインドの物流へ進出しています。
世界の注目を集めるインドの物流事情
インド物流がなぜ急速に成長しているのか、その理由とまだ残る課題、それに対する国内企業のアプローチなどをご紹介しました。インドの人口増加と物流市場は、数年前の予想を遥かに上回る速さで拡大しています。それに伴い、世界の物流関連企業がインドの物流市場に注目しています。今後もインドの物流は成長を続けていくと思われます。
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参考: