拡大するコールドチェーン市場―世界が目を向けるアジアの国々
世界規模で市場が拡大している流通体系コールドチェーン。低温を保って流通させることを意味しますが、コールドチェーンとは、具体的にはどのような物流の形なのでしょうか。コールドチェーンの意味と世界での市場動向、そしていま目が向けられているアジア市場の拡大についてご紹介します。
コールドチェーンとは
コールドチェーンは、ものが作られる場所から消費者の手に届く場所まで、一貫して所定の低温度を保ったまま流通させる手法のことをいいます。低温度での管理が途切れないように、運搬や保管といった流通プロセスをつなげていくことから、「冷たい連鎖」=「コールドチェーン」と名付けられました。ほかに低温流通体系、低温ロジスティクス、生鮮サプライチェーンマネジメントといった呼ばれ方もします。
肉や魚、野菜などの生鮮食品は、低温で管理することにより、鮮度が保たれます。これは卵や乳製品も同様です。また逆に、冷凍食品は冷凍状態を保ったまま消費者の手元に届かなければ、商品価値を大きく損ねてしまいます。
このように、温度管理が求められる製品は、身の回りにもたくさんあります。これらを生産地から小売まで、流通の各段階において、途切れることなく、温度を管理した状態で届ける仕組みコールドチェーンが、新たな商品価値と市場を生み出しているのです。
注目されるコールドチェーンの有用性
食品分野での活用が主流のコールドチェーンですが、他の分野でもその有用性が注目されています。
その1つが、医療や医薬品の分野です。ワクチン製剤を含む医薬品の一部は、低温での管理が求められます。しかし、コールドチェーンが整備される以前は、特定の医療機関までしか輸送することができず、地域によって受けられる医療に偏りが起こっていました。コールドチェーンが整備されてからは、日本全国に低温管理を必要とする医薬品が届けられるようになり、より充実した医療を受けることが可能になっています。
また、輸血に使う血液バッグも低温での管理が原則とされています。規定の温度を超えた場合、廃棄処分することが決められているほど、徹底した温度管理が必要なのです。全国の血液センターや医療機関などに安全な血液が届けられているのは、コールドチェーンによって低温を維持したまま輸送されているからと言えるでしょう。
こうしたコールドチェーンにおける温度管理に一役買っているのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)です。その一例として、センサーにより、計測したデータを保存する装置データロガーを応用した管理手法があります。データロガーにより、対象のモノがどのような温度変化の中で流通したのかをモニタリングすることで、より徹底した温度管理が可能となるのです。
IoTは、さまざまな分野のサプライチェーンを効率化させていますが、コールドチェーンとも結びつくことで食や医薬品の流通をさらに安全なものへと進化させました。
拡大するコールドチェーンの世界市場
このように、最新の技術と組み合わせることでコールドチェーンは低温を必要とする物流、特に食品物流に大きな変革をもたらしたともいわれています。それを表すように世界のコールドチェーン市場は急速に拡大しているのです。
グローバルインフォメーション社が2016年に発表した調査によると、コールドチェーンには2015年段階で、1億6724万ドルの世界市場規模があるとしています。2020年には、2億3449万ドルまで達すると予測しており、コールドチェーン市場の急速な拡大を表しています。
また、リサーチステーション社の調査もコールドチェーンの市場規模調査を発表しています。こちらは、さらに広範囲の市場規模を調査したものです。2018年段階で、2031億ドルの市場規模があり、2023年には、2932億ドルにまで拡大するとしています。
このように、世界のコールドチェーン市場規模は拡大傾向にあり、今後も続くと見られています。こうした急速な市場拡大にはどのような背景があるのでしょうか。
アジアの物流促進に向けて
世界のコールドチェーン市場を見ると、北米が最大の市場となっています。一方で、今後の成長率が最も高い地域として注目を集めているのが、アジア太平洋地域です。この地域でのコールドチェーン市場が急速に成長している理由として、人口増加と生活水準の急上昇により、生鮮食品の需要が増加していることが挙げられます。また、生活水準の上昇により、電化製品が普及し、同時に冷凍食品の普及が進んでいることも理由の1つでしょう。
このような、アジア太平洋地域の市場成長に対しては、日本も注目しています。農林水産省は、グローバル・フードバリューチェーン戦略として、コールドチェーンを海外展開する計画を推進。また、国土交通省もASEAN地域へのコールドチェーン普及と国際規格化を目指し、普及に取り組んでいます。
このように、日本では今、コールドチェーンを通し、アジア太平洋地域を1つの貿易圏として、成長していく活動を進めているのです。
鮮度を維持したまま届ける食のインフラ
鮮度を維持したまま食材を届けるインフラとしての物流、それがコールドチェーンです。コールドチェーンの市場規模は、世界的に拡大し続けており、今後はアジアを中心に普及が加速していくと思われます。
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参考:
- コールドチェーン ロジスティクス用語集|日本通運
- (編集者註:物流方式のひとつであるコールドチェーンってどんな方法?|物流倉庫プランナーズ ジャーナルオンラインは現在リンク切れ)
- (編集者註:世界のコールドチェーン市場 ~2020年:種類 (低温保存、低温輸送)・温度 (冷蔵、冷凍)・技術 (送風式蒸発器、共晶装置)・用途・地域別の予測|財経新聞は現在リンク切れ)
- コールドチェーン、23年に2932億ドルへ拡大する見通し|LOGISTICS TODAY