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バイオプラスチックが持つ可能性―人類が抱える課題を解決に導く

バイオプラスチックが持つ可能性―人類が抱える課題を解決に導く

新たなプラスチックとして注目を集める、バイオプラスチック。バイオプラスチックとは、従来のプラスチックとどのように違うものなのでしょうか。人類が抱える大きな課題と、バイオプラスチックを使うことで解決する問題について考え、物流業界とバイオプラスチックの関わりについてもご紹介します。

生物資源からプラスチックを生み出す

生物資源から生み出されるプラスチック、それがバイオプラスチックです。バイオプラスチックはどういった材料からどのように作られるのでしょうか。

バイオプラスチックとは

日本バイオプラスチック協会によれば、バイオプラスチックは次のように定義されています。

「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み,化学的又は生物学的に合成することにより得られる分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。(化学的に未修飾な非熱可塑性天然有機高分子材料は除く)」
(バイオマスプラ入門|日本バイオプラスチック協会 http://www.jbpaweb.net/bp/bp_faq.htm,2018-10⁻31閲覧)

従来のプラスチックの原料となる石油原料は、限られた地下資源であり枯渇が懸念されています。これに対し、バイオプラスチックの原料は主にトウモロコシやサトウキビなどの植物で、栽培により繰り返し収穫することが可能でしょう。植物から作られるバイオプラスチックは、この継続性が期待されている新しい作り方のプラスチックです。

バイオプラスチックの種類

バイオプラスチックは大きく2つに分けて考えることができます。

1つは原料を中心に考えたとき、石油原料に頼らず継続性のあるバイオマスから作られたバイオマスプラスチックです。これには次のような種類があります。

  • バイオポリエチレン
  • バイオポリウレタン
  • 天然ゴム

もう1つの分類が、微生物により分解される、環境負荷の低減を目的とした生分解性プラスチックです。次のようなものが代表的です。

  • ポリ乳酸
  • 澱粉樹脂
  • PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)

生分解性プラスチックは世界でも注目度が高く、この他にもさまざまな種類のものが開発されています。

バイオプラスチックはこんなところで使われている

バイオプラスチックはさまざまな場所で活躍しています。

  • 日用品(ゴミ袋・水切りネット・紙おむつ)
  • 繊維製品(カーペット・衣類)
  • 電気・電子製品(パソコン部品・携帯電話部品)
  • 土木・建築資材(土嚢袋・防草シート)
  • 農業資材(育苗ポット・マルチフィルム)
  • 漁業資材(漁網・釣り糸)

植物を原料としたプラスチックと生分解性プラスチックが用途に応じて、身近なところから各種産業まですでに幅広く使われています。

バイオプラスチックのメリット・デメリット

バイオプラスチックを使うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。また、従来の石油原料プラスチックと比較した欠点とはどのような部分でしょうか。

バイオプラスチックのメリット

  • 将来性
    バイオプラスチックは植物から作られるため原料枯渇の可能性が低く、将来においても継続性があります。
  • 焼却時のダイオキシン低減
    バイオプラスチックはそれ自身が持つ燃焼熱が低いため、低温で焼却可能です。これにより燃焼時にダイオキシンが発生しません。
  • カーボンニュートラル
    植物は二酸化炭素を吸収し成長します。植物を原料とするバイオプラスチックを焼却したときには二酸化炭素が発生しますが、原料となる植物の栽培からトータルで見ると、二酸化炭素が増減しません。このような考え方をカーボンニュートラルと言い、地球温暖化ガス削減の観点から注目されています。
  • 微生物による分解
    生分解性プラスチックは、微生物により分解され自然へと還元されます。海に漂う微小なプラスチックごみや、土壌に残り続けるプラスチック廃棄物が発生しません。
  • 分解から再生までの循環
    生分解性プラスチックが微生物により分解されると、水と二酸化炭素に還元されます。この2つは植物の育成に不可欠な要素であり、再びバイオプラスチックの原料となる植物が育ちます。このようにバイオプラスチックには再生のサイクルが成立します。

バイオプラスチックのデメリット

  • 製造コストが高い
    バイオプラスチックはまだ新しい技術であり、従来のプラスチックほど安価に製造できないのが現状です。しかしながら、今後、需要と生産量が増えていけばコストは下がっていくことが見込まれます。
  • 製造に使うエネルギーには石油燃料が必要
    バイオプラスチックの製造過程で石油燃料によるエネルギーが使われています。この点を含めると、完全なカーボンニュートラルとはいえないという意見もあります。
  • 耐熱性と強度に課題
    当初のバイオプラスチックは耐熱性と強度に問題がありました。とはいえ、現在までにこれらを解決したバイオプラスチック素材も開発されています。

バイオプラスチックと物流・梱包

バイオプラスチックは、すでに物流資材・梱包資材としても使われ始めています。バイオプラスチックと物流・梱包はこれからどのように関わっていくのでしょうか。

経済産業省の統計(編集者註:現在リンク切れ)によると、国内のプラスチック生産量のうち、容器やシート(包装パック材の材料)に加工されるものは全体の19%です。また、農業用や加工紙などのほか、スーパーの袋やラップなどの包装用としてフィルムに加工されるものは37%にのぼります。材料別に見ると、代表的な汎用樹脂のポリスチレンでは出荷量全体の48%もの量が包装用として生産されています。

このように、プラスチック全体でも物流資材、梱包資材としての用途は大きな割合を占めます。物流・梱包資材の分野でバイオプラスチックの使用率が上がった場合、世界全体のバイオプラスチック使用率にも大きな影響を与えることは容易に想像できるでしょう。

すでに使用されているバイオプラスチックでできた物流資材として、代表的なものにはスーパーの買い物かごがあります。また、プラスチックパレットをはじめとして、台車、コンテナーなどの物流資材にバイオプラスチック製のものが登場しています。

バイオプラスチックの開発は進み、石油原料プラスチック製品の規制を進める国も増えています。バイオプラスチック製の物流資材が主流となり、梱包資材に生分解性プラスチックが使われることも十分あり得るでしょう。

プラスチック文明の転換期

今やプラスチックは、文明を支える素材とも言えるほどあらゆる場所で使われています。このとき、プラスチックの原料である石油資源が枯渇すれば、文明全体に大きく影響します。バイオプラスチックはこの問題に対する解決の糸口となるだけでなく、近年問題となっているマイクロプラスチック問題にも関わる、重要な技術として注目されているのです。

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参考:

  • (編集者註:生分解性プラスチックの現状と課題(PDF)|日本バイオプラスチック協会は現在リンク切れ)

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