物流倉庫の地震対策―被害リスクを最小化するためには
日本が地震の多い国であることはすでにご存じかと思いますが、物流における地震対策は整っているでしょうか。商品を保管する倉庫は、スペースを確保するために高層化する傾向にあり、それとともに地震への備えも重要になっています。倉庫における地震のリスクや対策、具体的な備え方などをご紹介します。
地震が倉庫に与える被害
もし大きな地震が発生したとき、倉庫はどのような被害を受けることが考えられるでしょうか。倉庫における地震のリスクから考えてみます。
想定しておくべき倉庫の地震リスク
近年、日本各地で大規模な地震が頻発しています。物流業界では、地震によって倉庫に大きな被害が出ているケースもあります。これまで地震被害を受けたことのない地域でも、他人事と考えず備えておかなければなりません。まずは、起こりうるリスクを整理するところから始めてみましょう。
地震によって倉庫には次のような被害が出ることが考えられます。
- 商品の落下
倉庫のラックや段積みしている高い位置から、商品が落下することが想定されます。荷主から補償を求められることも考えなければなりません。 - ラックの転倒・倒壊
ラックが転倒したり倒壊したりすることで、商品が破損するだけでなく倉庫設備にも被害が出る可能性があります。 - 機器や設備の移動・衝突・破損
倉庫で使用する機器や設備が地震の揺れによって移動し、衝突したり破損したりすることも考えられます。特に大型設備は移動してしまうだけでも断線の危険もあり、復旧に時間とコストがかかります。 - 通路の閉鎖
荷崩れ、設備の転倒や移動によって通路がふさがれてしまう可能性があります。安全な避難経路が失われた場合、倉庫に取り残されたり、無理に脱出しようとして二次災害が起こったりということが考えられます。 - 作業者のけが
商品の落下やラックの転倒、設備の移動や衝突、通路の閉鎖などによって、作業者への被害が出るのが最も大きなリスクです。
このように、倉庫には地震によって受ける可能性のある被害とリスクがいくつもあります。どのような備えが必要なのでしょうか。
地震は必ず起こるものという認識が必要
日本は世界の中でも地震の多い国です。このことを念頭に、日本国内の倉庫は地震被害にさらされるもの、という認識を持っていなければなりません。
委託倉庫の場合は、荷主から預かった商品を保管します。このとき、地震対策の有無によって荷主からの信頼度や商談機会にも関わります。自社倉庫においても、倉庫にある商品が万が一失われると大きな損害となります。なにより、従業員に被害が出ることは避けなければならないリスクです。
これらのことを考え、常に地震を想定した対策をし、改善点があれば改善を進めていきましょう。
BCPとして地震発生時の対応は想定しておくべき
BCP(事業継続計画)においても地震対策は重要です。BCPは、もし大きな地震や大規模な停電などの災害が発生した場合に、企業が損害を最小限に抑えながら経営活動を維持し、事業の継続と早期復旧を可能にするために策定しておく行動計画です。
形のある商品を扱う企業の場合、地震によって倉庫が被害を受けると物流がストップし、企業としての経営活動も止まることになりかねません。
そういった事態に備え、BCPの一環としても倉庫の地震対策と緊急時の対応方法も設定しておいたほうがいいでしょう。
備えていますか?地震対策のポイント
地震に対する備えとして、具体的な対策となる6つのポイントをご紹介します。これらのポイントを取り組むことで被害を抑えることが可能になります。
建物の耐震性チェックと補強
倉庫が倒壊し大きな被害となるというケースはないとは言い切れません。特に、築年数の経過した倉庫では再確認が必要です。建物の耐震診断を行い、耐震性に問題がある場合は補強工事を行いましょう。
ラックの固定や免震化
倉庫レイアウトの流動性を重視するあまり、ラックを固定せずに使用しているのはリスク拡大の要因となります。ラックの確実な固定を行い、流動性が必要であれば免震構造を持つ段積みラックの採用などを検討しましょう。
機器や設備の固定や配置見直し
機器や設備が移動したり転倒したりしないように固定し、ラックの倒壊によって被害を受ける可能性があれば設置場所の変更も検討しましょう。
複数の避難通路を設定
避難通路を複数設けることで、緊急時の避難安全性を高めることができます。新たに避難通路を設定した場合は、表示も整備して周知を図りましょう。
保険の加入や見直し
地震被害に適用される保険の加入やプランの見直しによって、いざというときの被害額を補填する仕組みを用意しておきましょう。保険に加入していることも荷主との信頼関係に関わるだけでなく、災害時における企業の事業継続にも結びつきます。
業務リスクの分散
高額商品が破損すればそれだけ被害額も大きくなります。高額な商品は、より安全性の高い場所に保管するよう入出庫レイアウトを考え、万が一倉庫に被害があっても最小化できるよう工夫をしましょう。倉庫管理業務を倉庫内ではなく別の建物に移すことでも、倉庫被災時に業務復旧が早まるため、業務のリスク分散が可能になります。
地震に備えるためのラックや設備、商品の固定方法
地震に対する備えは、責任者を設置し計画を立てて進めていくことが重要です。また、定期的にリスクアセスメントを行い、改善点を話し合うことで対策は充実していきます。
基本となる対策としては、次のような方法で商品やラック、設備などを固定し、小さな対策を積み上げて全体の安全性を確保しましょう。
アジャスターやアンカーボルトによる固定
ラックや設備はアジャスターでぐらつきをなくし、水平を保つようにしましょう。また、穴付きのアジャスターを使用し、アンカーボルトで床にしっかり固定し、転倒や揺れによる移動を防ぐ対策をします。ラックや設備のぐらつき、アンカーボルトの緩みなどは定期的に点検する仕組みを整えましょう。
ストレッチフィルムやバンドで商品を安定化
固定せずに段積みしている商品は、それだけで荷崩れのリスクがあります。また、普段の業務においても運搬時に荷崩れによって商品が破損する危険があり、作業の効率もよくありません。
ストレッチフィルムやバンドを利用し、商品がパレット上で安定するようにしましょう。また、ストレッチフィルムやバンドによる固定方法を標準化し、作業手順の掲示や教育によって周知しましょう。固定方法が標準化されることで、取り付け・取り外しの際の作業も効率化されます。
商品落下防止バーや落下防止ネットを設置
ラックの高い位置には、商品落下防止バーや落下防止ネットを設置し、商品の落下を防ぎましょう。また、最も怖いのは商品が人の上に落ちるというケースです。人の安全を守る意味でも、ラックの一定高さ以上には落下防止対策をとる基準を定め、徹底しましょう。
地震大国・日本の倉庫は地震対策が必須
もし大きな地震があったとき、倉庫はどのような被害を受けることが考えられるか、そのリスクと対策をご紹介しました。
世界でも有数の地震大国である日本では、倉庫の地震対策は考慮しなければならない項目の一つです。ただし、日本には蓄積されてきた地震対策のノウハウがあり、物流設備メーカーも地震対策を考えた倉庫設計や器具の提供を行っています。そういったノウハウを活用し大切な商品を保管する倉庫を地震から守りましょう。
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