理想の上司への近道?レイバースケジュールで効率的な人員管理を
人員や勤務表の管理は、人員配置に携わる人にとって多くの時間を費やす作業であり、業務全体の生産性を大きく左右する部分でもあります。こういった人員管理の手法の一つに、レイバースケジュールを用いた管理があります。これはどういった管理手法なのでしょうか。レイバースケジュールの特徴や運用方法、メリットや課題についてご紹介します。
レイバースケジュールとレイバースケジューリング
レイバースケジュールは、英語でLabor Scheduleと書きます。Labor(レイバー)は労働者や従業員といった意味があり、レイバースケジュールで「従業員の予定表」となります。直訳すると一般的な勤務表と何も変わらないように聞こえますが、管理手法としての「レイバースケジュール」は少し違ったものです。
レイバースケジュールでの管理手法とは、時間や人数を基準に勤務表を作る、すなわち「仕事時間を管理」するのではありません。文字通り「従業員を管理」するのがそのプロセスとなります。人員に仕事を割り当てるのではなく、仕事に対して人員を割り当てるのが、レイバースケジュールの基本となる考え方なのです。
このようにして作ったレイバースケジュールを用いて、人員管理をする手法を、レイバースケジューリングといいます。レイバースケジュールはアメリカの流通業で開発され、今では世界中の小売業や物流業界で導入されています。
レイバースケジュールを使うためには
レイバースケジュールを使うためには、どのような手順で進めればいいのでしょうか。
レイバースケジュールを運用するための準備
レイバースケジュールを運用していくためには、次のような条件を把握しておく必要があります。
- 仕事のカテゴライズと細分化(作業の種類)
- それぞれの作業の範囲を明確化(作業の範囲)
- 作業量の把握(作業の量)
これらのデータを蓄積し、そこから適正な人員投入を行っていくのが、レイバースケジューリングです。このようなデータを集めるための具体的な手法として、次のことが重要となります。
- 作業ごとの予定時間を明確化
- 作業ごとの目標工数を設定
レイバースケジュールでは、こういった条件をそろえて「誰が」「どの時間帯に」「どの作業を」「どれだけ作業する」を決めていきます。
レイバースケジュール運用の手段
レイバースケジュールを運用しようとしたとき、一般的な勤務表をベースに、そのまま書き込んでいっては意味がありません。多くの事業所が、手書きの勤務表やExcelを使った自作の勤務表、無料配布されているテンプレートを使っています。しかし、それらの勤務表は、人員を基準として考え隙間を埋めていく、人員管理法です。
レイバースケジュールでは、作業量の把握が重要となるため、一般的な勤務表での管理とは、根本の考え方が異なっています。レイバースケジュールを本格的に運用していくためには、ベースとなる表から変えていかなければなりません。レイバースケジュールに適した、Excelテンプレートや専用ソフトが販売されていますので、それらを活用して運用していきましょう。
レイバースケジュールのメリットと課題
ここで、レイバースケジュールによってどのような効果が生まれるのか、どんな課題があるのかを見てみましょう。
レイバースケジュールのメリット
レイバースケジュールの導入により次のようなメリットがあります。
- 生産性向上
仕事の質や量を元に人員をコントロールするため、人員のムダや作業のばらつきが排除され、生産性が向上します。 - 人件費のムダ削減
一般的な勤務表で固定的な勤務管理をしている場合、過剰人員となる勤務日・勤務時間が発生します。レイバースケジュールではこういった部分がなくなり、人件費のムダを削減できます。 - 人時生産性の見える化
固定的な人員投入と違い、変動的な人員投入をするレイバースケジュールでは、従業員1人の1時間当たりの粗利益(人時生産性)を、数値化して把握することが容易です。このように重要な経営指標である、人時生産性を見える化できる点は、大きなメリットです。 - コントロールスキル向上
仕事に対して、どれくらいの人員が必要なのかを基準として、スケジュールを組み立てていくことで、人員コントロールのスキルが向上していきます。多くの時間を費やしていた勤務表作りを、短い時間で効率的にこなすことができます。 - スケジューリングの柔軟化
その日いる人員に対して、仕事を割り振るのではなく、その日の仕事に合わせて、人員投入するため、仕事量にとらわれる必要がありません。柔軟な管理が可能となります。
レイバースケジュール導入の課題
メリットの多いレイバースケジュールですが、導入に関しては課題もあります。
- システム導入のコスト
専用のソフトやExcelテンプレートを導入する際、購入の費用が必要です。また、運用の準備として、作業分析が必要であり、そのためのコストも発生します。こうしたイニシャルコストと、得られる効果を比較し、導入を判断する必要があるでしょう。 - 人員の質に対する課題
レイバースケジュールでは、仕事の量とそれに対する人の量に着目して、スケジューリングします。このとき、こなせる作業が多い人も少ない人でも、同じ1人の人員として計算します。しかし、実際の現場ではこの人員の質は非常に重要で、生産性を大きく左右する要素です。そこでレイバースケジュールでは、作業ごとに標準時間を定め、この質のバラツキを吸収するよう設計します。より精度を高めるためには、バラツキを減らすための、人員教育が必要となり、そのためのコストと時間が必要です。 - 属人化解消のための教育
人員の質のバラツキが考慮されないことに加え、その作業に従事するための、知識や習熟度が足りているかという問題もあります。そもそもその作業について何も知らなければ、そこに配置することは不可能です。限られた従業員の中でスケジュールをコントロールしている以上、特定の作業に従事できる人員が不足することがあります。こういった事態の発生をなるべく減らすため、標準化と教育を進め、特定の人でなければ作業できないという状況を、解消する必要があります。 - 余剰人員・人員不足の対応
限られた従業員の中でのスケジューリングは、時として出勤できる人が不足する曜日や時間が発生します。また、それとは反対に、作業が少なく休んでもらう必要も出てくるでしょう。こういった余剰人員や人員不足が発生したとき、その都度、新規採用や解雇をするわけにはいきません。こういった局面にも慎重に対応し、調整のためのスキルが求められます。 - 作業の多様化と人員の意識改革
人員を変動的に投入するためには、個人ができる作業を多様化する必要があります。今までやっていなかった作業も、覚えてもらわなければなりません。こういった変化は、必ず拒否反応を生み出します。レイバースケジュールの効果に対する理解と納得、新たな作業手順の教育、そして、従業員の意識改革が必要です。アルバイトやパート従業員の多い職場では、この課題解消がもっとも難しいかもしれません。 - スケジューリングのためのデータ蓄積とスキル向上
スケジューリングの精度を高めるためには、その前提となる、作業についてのデータを集める必要があります。そのため、ある程度のデータ量が蓄積されるまでは、スケジューリングがうまくいかないこともあります。また、効率よく質の高いデータを集めるためのスキルも必要となります。こういったデータが蓄積されるまでの助走期間と、データ収集の手腕が必要になることも課題の1つです。
適所に適材を配置するレイバースケジュール
物流業と小売業を中心に注目される人員管理法、レイバースケジュールについてご紹介しました。
「適材適所」という考え方がありますが、これは適した質を持った人材を、適正のある場所に配置するという考え方です。レイバースケジュールはこれとは異なり、適正な作業を把握した上で、それに適した量の人員を配置することで、生産性を向上させる人員管理手法です。
1人に無理な作業量を押し付けることなく、高い生産性を生むことが可能となり、理想の上司に近づくかもしれません。特に物流業や小売業において効果が高いとされており、物流業での人員管理に関わる方は、一度その基本的な考え方を学んでみてはいかがでしょうか。
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