倉庫業務のアウトソーシング、メリット・デメリットと活用のポイントを解説
社会構造の変化や消費者ニーズの細分化といった要因により、物流を取り巻く環境は厳しさを増しています。円滑な物流を実施するためには、輸送・保管のすべての過程における効率化が必要ですが、その解決策の一つがアウトソーシングです。今回は物流の中でも特に煩雑な作業が求められる、倉庫業務のアウトソーシングの活用について解説します。
倉庫業務のアウトソーシングとは何か
初めに、倉庫業務のアウトソーシングの基本的な知識と、必要とされる背景を紹介していきます。
倉庫業務アウトソーシングの概要
倉庫業務のアウトソーシングは、物流アウトソーシングの中の一分野です。物流アウトソーシングとは、自社の物流機能を物流の専門会社に委託すること。この中でも倉庫業務に特化した専門業者に委託することにより、自社の入庫や在庫管理といった作業にかかる負担を大きく軽減できます。
アウトソーシングの形態の一種であるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)では、企画や設計・施策の実行・分析までを一括して外部委託することが可能です。業務の一部を切り出すのではなく、一貫したプロセスを委託できるため、作業内容にも均一性があり、業務同士の連携が取りやすいというメリットがあります。
倉庫業務のアウトソーシングで委託できる主な作業領域としては、以下のようなものがあります。
- 入庫・棚入れ・検品
- 商品保管
- 流通加工・ピッキング・梱包
- 発送
倉庫業務が抱える課題
倉庫業務のアウトソーシングが注目される背景には、企業が抱える数々の課題があります。
- 人材不足・教育負担
人手不足が特に深刻という業界事情もあり、人材の確保が難しい状況が続いています。人材の獲得ができても、企業や業態、扱う商品、倉庫の状況によって業務内容が異なるため、現場に出るまでの教育が必要となり、企業側には大きな負担がかかります。
- スペースの活用がうまくいかない
昨今の物流では、ニーズの細分化とともに扱う商品も多様化する傾向にあります。頻繁なロケーションの変更とスペースの最適化が必要とされますが、作業効率などを考えると実際には容易ではありません。スペースの活用がうまくいかず、スムーズな作業動線が作れていない悩みを抱える現場も見られます。
- アナログな管理状況
ピッキングの自動化、ロボティクスの活用、倉庫管理システムの導入など、新しい技術の活用は倉庫業務の課題解決に役立ちます。しかし、導入に際してはコスト負担や体制整備という課題があり、整備が進んでいない企業も多くあります。手作業・人力による業務が減らず、スピード化が図れないと顧客ニーズへの対応が困難です。
アナログな伝達方法では情報のタイムラグが発生し、ムダな作業が増える可能性があります。欠品が発生する、出荷のタイミングを逃しロスが生じるなど、損失リスクが発生しやすい状況から抜け出せません。
- 人的ミスが発生する
自動化の遅れに伴い、少ない人員に対する作業負担が増加すると、人為的なミスが発生しやすくなります。ルールが統一されていない、管理が徹底されていない、管理ツールの活用がなされないなどの理由で、うっかりミスや思い違いが頻繁に起こると、企業全体の信頼低下を招きかねません。
アウトソーシングのメリット・デメリット
倉庫業務のアウトソーシングは、上記で解説したような課題解決への一手となります。その一方で、アウトソーシングにはデメリットがあることも否定できません。アウトソーシングを活用することで得られるメリットと、注意すべきデメリットを解説します。
メリット
- 作業の確実性が担保され、物流品質の向上が可能となる
入荷・入庫・棚入れ・検品・在庫管理、そして、ピッキング・梱包から出荷までの流れにおいて、プロの視点からの管理が行われます。各段階での作業精度が高く、ミスが発生しにくくなります。
- 商品管理がシステム化されておりロスの発生がなくなる
倉庫業務のアウトソーシングを専門にしている業者では、倉庫システムやAIによる監視体制の確立が行われており、すべてがシステム化されています。在庫の不足、過剰といった問題が起こりにくく、ロスの発生を防ぎます。
- 入庫から発送までの一連の作業がスピード化される
入荷から出荷、返品に至るまでの情報が一元管理されており、作業の多くが自動化されているため、出荷依頼に対して迅速に対応が可能です。
- 倉庫業務に振り分けている人材をコア事業に注力できる
倉庫業務のアウトソーシングを依頼した企業では、煩雑な作業や管理から社員が解放され、社内人材を自社のコア事業に集中させられます。
- 繁忙期・閑散期の対応が柔軟に行えるため、物量に従って活用を調整できる
繁忙期・閑散期に対して必要に応じた依頼が可能となり、倉庫の空きスペースや倉庫管理の余剰人員といったムダをなくせます。これにより、自社管理を行うよりもコスト削減ができる可能性があります。
デメリット
- 倉庫管理業務のノウハウが蓄積されない
倉庫管理業務には、各プロセスの遂行とその連携において経験値が求められます。外部サービスに委託することにより、ノウハウの蓄積ができなくなる恐れがあります。特にBPOの場合では、全プロセスの一括委託が可能となるため、社内に倉庫管理業務の知識を持つ人材がいなくなるということも起こり得ます。
- 情報漏えいのリスクがある
倉庫業務では、顧客情報を始めとする企業内の情報が必要とされます。依頼先業者の管理体制によっては、情報漏えいのリスクが生じることもあります。
- イレギュラー案件、急ぎ案件に対応しにくい可能性がある
通常の案件であれば問題なくとも、イレギュラーな案件、緊急性の高い案件の場合では、自社で処理を行うよりも手間となることがあります。業者に連絡し、作業内容の打ち合わせや料金契約を行う必要があるため、社内で対応するよりも遅れてしまうことは避けられません。
- 活用の仕方によってはコストが過大となる
倉庫業務のアウトソーシングには、多種多様なサービスプランがあります。どの部分をどのように活用するのかによっては、依頼の料金がかさみ、コストが想定以上となってしまう可能性もあります。
倉庫業務のアウトソーシングを成功させるポイント
倉庫業務アウトソーシングを成功させるためには、以下のようなポイントに注意していく必要があります。
- 自社ニーズにマッチしたサービスを選ぶ
倉庫業務のアウトソーシングが成功するために最も重要なポイントは、委託する事業者選びにあります。業界に精通した事業者であることはもちろん、自社と同程度の規模や、同業態の経験値が高いという点を重視することが必要です。
事業者のこれまでの商品保管・管理実績を調べ、自社業務にどの程度折り合わせてくれるのか、対応の柔軟性についても確認しておきます。もちろん、自社が求めるサービス提供と料金のコストバランスも大切です。
依頼先を的確に選定するためには、自社が必要とする業務内容を明確に把握し、それを確実に遂行してくれるだけのノウハウを持っていることを、確信できる事業者でなければなりません。
- 倉庫業務以外との連携
倉庫業務は企業活動の一部に過ぎず、他の業務との連動が欠かせません。アウトソーシング事業者を選ぶ際には、例えばECサイトや自社システムと管理システムがうまく連携できるかなど、自社事業との連動性に着目することも大切です。
- 倉庫の立地
料金格安の事業者を選んだら、倉庫が遠隔地で様子を見られないというのでは不安が残ります。見逃されがちですが、倉庫の立地も事業者選定の重要なポイントです。利便性の高い場所に倉庫があれば、複数の交通経路が確保され、配送遅延のリスクが低いと考えられます。契約前に現地の見学が可能であれば、さらに安心して委託ができます。
- 委託業者と契約内容を詳細に詰める
倉庫業務のアウトソーシング契約にあたっては、あらかじめシミュレーションを行い、気になる要素をしっかりと確認しておく必要があります。各プロセスにおける責任所在の明確化は、契約上のトラブルを回避し、万が一の場合の自社負担を軽減する拠り所となります。作業状況の逐次報告や問合せへの対応が確立していれば、事業者への信頼が高まります。
不明な点の説明・突発的な依頼の相談窓口などのサポート体制を、必ず選択条件に入れておきましょう。
アウトソーシングの賢い活用で倉庫業務の充実を図る
倉庫業務のアウトソーシングは、自社独自では難しい作業の効率化や人的ミスの軽減といった点で、大きなメリットがあります。一方で、社内にノウハウが蓄積されないといった、デメリットがあることも理解しておかなければなりません。最終的に目指すのは、顧客ニーズに確実に応えられる物流体制です。倉庫業務のアウトソーシングにより何がもたらされるのか、その効果を十分に検討し、適切な選択をすることが求められます。
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