梱包材入門【ストレッチフィルム編】便利な梱包材としての特徴とは
幅広く使われているストレッチフィルムは、物流に欠かせない梱包材です。今回はこのストレッチフィルムについて、特徴や用途、メリットと環境との関係性についてご紹介します。
万能包装材?ストレッチフィルムの特徴
ストレッチフィルムは梱包材として優れた性質を持っています。その特徴から見ていきましょう。
ストレッチフィルムとは
ストレッチフィルムは、ポリエチレン製の透明なフィルムでできた梱包材の一種です。伸縮性があり、自己粘着性・静電気・摩擦力によってくっつく特性があります。重ねて巻くことで強度を持たせたり、らせん状に巻いていくことで大きな面積をカバーしたりすることも可能です。一般的に紙管に何重にも巻かれたロール状となっていますが、近年は紙管のないタイプのものもあります。厚みや幅にさまざまな種類があり、用途に合わせて選ぶことでさらに多様な使い方ができます。ストレッチフィルムは使い方の自由度が高く、万能包装材とも言える存在です。
食品用ラップとの違いは?
見た目も使う際の感触も、ストレッチフィルムと食品用のラップは似ています。実際に作業現場でも、ストレッチフィルムのことを「ラップ」と表現する場合も少なくありません。しかし、この2つには大きな違いがあります。
その違いは材質です。ストレッチフィルムはLLDPE(直鎖上低密度ポリエチレン)でできています。LLDPEは、水分は通しにくいものの気体の透過性があり、乾燥や匂いについても密閉が求められる食品保存には向いていません。また、耐寒性は高いものの耐熱性は低く、加熱することができないという点も、食品への使用に向かない理由です。
一方の食品用ラップは、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)製で、水分・気体ともに透過しにくい素材でできています。耐寒性・耐熱性ともに高く、冷凍庫内での保存や電子レンジの使用にも対応可能です。ただしPVDCは材料価格が高いため、包装資材としては求められる機能を満たしコストに優れるLLDPEが使われています。
ストレッチフィルムの用途
ストレッチフィルムは次のような用途で使われています。
パレットに積載したダンボール箱のバンドとして
パレットにダンボール箱を積載したとき、もし、そのダンボール箱が縦長でさらに2段3段と段積みしてあると、フォークリフトでの運搬中に簡単に崩れてしまいます。こういった場合の対策として、ゴムバンドや面ファスナーのベルトを巻く方法などがあります。しかし、これらの方法はワンウェイでの取引ではコスト負担が問題となり、戻す場合にも管理にコストと手間がかかります。このとき、ストレッチフィルムによってパレット上のダンボール箱を帯状に巻くことで、それらの負担が軽減します。パレット上の商品に、自動でストレッチフィルムを巻くことができる自動ストレッチ包装機を使用すれば、省人化・省力化にもつながります。
このように、商品を押さえるバンドとしてストレッチフィルムを使用することで、ダンボール箱の安定はもちろんのこと、資材の管理も簡易化できます。
ふぞろいな商品をまとめる場合に
異なる形状の箱を複数パレットに積む場合、荷崩れの可能性が高くなります。こういった場合、ストレッチフィルムでまとめることで商品を安定させることができます。また、箱状に限らず積んだ際に不安定になる商品を運ぶ際にも、ストレッチフィルムでまとめると便利です。例えば、パイプ椅子を大量にパレットに積んで運ぼうとすると、崩れて散乱する光景が目に浮かびます。こういった場合にストレッチフィルムによって商品を巻くことで簡単に荷崩れ対策ができます。
このように、不定形のものを抑えたりまとめたりする場合、ストレッチフィルムは簡単に対応できます。
長期保存の商品のカバーとして
業務で使用する機器や設備は、生産計画によっては長期使用しないこともあります。そういった場合に、ストレッチフィルムによって全体を覆うことで、ゴミやほこりの付着、汚れなどを防げます。また、下屋のような半屋内の場所にものを保管する際にも、ストレッチフィルムによってカバーしておくことで外からの雨や土ほこりから守れます。
毎回形状の違う輸送物の梱包に
製造業において国内に複数の拠点があり、機器や金型などを共用しているケースは少なくありません。こういった場合、拠点間を行き来する商品の形状は毎回異なり、1枚もののポリ袋では対応できず、専用ケースを作成するのも大変です。また、中古品を取り扱う業種では、新品販売時のケースがすでにない場合も多く、輸送時の梱包に手間がかかります。そこで、ストレッチフィルムによって商品を覆い輸送する方法が便利です。
塗装時の養生・マスキング
ストレッチフィルムは水分を通しにくいため、塗装時の養生やマスキングにも使われます。マスキングテープでは対応できない広い範囲をマスキングでき、複雑な形状のものを覆えます。
廃棄物の梱包に
廃棄物をまとめて梱包する際も、ストレッチフィルムは便利です。廃棄物は多くの場合、形がふぞろいでサイズも大小が入り混じっています。こういったものをまとめて梱包できます。
ストレッチフィルムを使うメリット
このように、さまざまな場面でストレッチフィルムが使われていますが、それにはストレッチフィルムが持つメリットが関係しています。ストレッチフィルムは梱包材として次のようなメリットを持っています。
手で切ることができテープが不要
ストレッチフィムルムは、フィルム1枚の状態だと特に道具を使用しなくても、簡単に手で切れます。また、自己粘着性があるためテープや接着剤を使用しなくても固定ができます。そのため、製造ラインにおけるパレット積みの作業時のような限られたサイクルタイム内でも、道具を使用せず簡単に梱包ができます。
透明で視認性が高い
ストレッチフィルムは透明なため、梱包しても中が透けて見えます。例えば、パレット積みしたダンボール箱をストレッチフィルムで梱包した場合も、ダンボール箱に印刷された商品情報などをそのまま見られます。また、バーコード部分が覆われてもバーコードリーダーでそのまま読み取ることが可能です。
伸び弾性と破裂強さが高い
ストレッチフィルムは高い伸び弾性があり、かなり引っ張って使用してもなかなか切れることはありません。そのため、商品に密着させて巻きたい場合や張りを持たせて巻きたい場合などにも、テンションを掛けながら巻けます。また、厚みのあるストレッチフィルムは破裂強さにも優れます。薄いフィルムの場合でも、複数枚重ねることで高い破裂強さを発揮でき、機器の先端部や少々の刺突では破けなくなります。
防滴・防塵
ストレッチフィルムは水を通しにくい素材でできているため、梱包によって商品の防滴性を高められます。もちろん防塵の効果もあります。こういった性質から、ダンボール箱だけでは防滴・防塵の面で不安な場合や、商品や機器を直接梱包する場合にも使用できます。
ストレッチフィルムと環境問題の関係は?
メリットが多く手軽で便利なため、多くの用途に使われているストレッチフィルムですが、その手軽さには「廃棄しやすい」という点も含まれています。しかし、その手軽さは廃棄物を増やすことと背中合わせです。ストレッチフィルムの使用を環境問題の観点から考えたとき、どのような課題がありどういった対策がとられているのでしょうか。
ストレッチフィルムは焼却されるとCO2を排出します。また、万が一工場や物流現場から外部へ出てしまうとプラスチックごみになる可能性もあります。そのため環境問題の観点からは使用が好ましくないと考えられるかもしれません。これは、SDGsの高まりもあり注目される問題です。しかし、ストレッチフィルムを使うことで物流に持続可能性(サステナビリティ)をもたせている面もあります。
ストレッチフィルムは薄く、同面積を覆った際のプラスチック使用量は他のプラスチック製梱包材と比べ少量です。さらに、ストレッチフィルムは厚さに関しても種類が豊富で、20μから16μに変えることで、約20%のプラスチック使用量を削減できます。このように、ストレッチフィルムを使用することで、相対的に考えてプラスチック使用量の減少に寄与する可能性もあります。
また、一般的に各社の製品で同質の材料が使われているという点も、ストレッチフィルムの強みとなっています。同質の材料が用いられていることでリサイクル性が高くなるためです。実際に、ストレッチフィルムを回収してリサイクルしている業者も多く、この流れが普及することでより高いリサイクルが可能です。また、もしストレッチフィルムが廃棄物として焼却された場合も、CO2は排出しますがダイオキシンのような塩素系ガスは出しません。
このように、ストレッチフィルムを梱包に使用する際に、持続可能性のある物流を目指すことは十分に可能です。梱包材とSDGsについてはこちらでもご紹介しておりますのでご覧ください。
(関連記事:レポート#7:SDGs取り組みの第一歩!環境にやさしい梱包を考える|株式会社トヨコン)
ストレッチフィルムは広い用途で使える便利な梱包材
ストレッチフィルムの特徴や用途、メリット、環境問題やSDGsの観点から見た場合の課題と可能性についてご紹介しました。ストレッチフィルムは伸縮性・自己粘着性がありテープを使わず止めることができ、ダンボール箱の荷崩れ防止によく使われています。防水・防塵のために使うこともでき、形状に関係なく梱包できるため、幅広い用途で使われている便利な梱包材です。
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参考:
ストレッチフィルムの特長と使用例|MISUMI-VONA【ミスミ】
ストレッチフィルム 梱包に欠かせない|物流倉庫プランナーズ