【インタビュー】お客様と同じ方向を見ていきたい―トヨコンの過去と未来を語る
現在、包装設計から資材の販売、梱包・出荷、そして輸送に至るまでを総合的に提案しているトヨコングループ。その前身である「豊川梱包工業」は、一社専属の梱包会社としてスタートしています。
時代の変遷に合わせ、先を見据えて事業の改革に取り組んできた明石耕作社長に、これまでの会社の歴史や自社の強みについて聞きました。
“一社専属の梱包屋”としてのスタート
「1963年(昭和38年)に私の父が大阪から豊川に移り住み、ミノルタカメラ(現:コニカミノルタ)専属の梱包会社を豊川に立ち上げたのが、豊川梱包工業の始まりです」
現在、株式会社トヨコンの代表取締役社長である明石耕作氏は、創業当時のエピソードをこう話します。
「ミノルタカメラが豊川市にプリンターやコピー機の工場を立ち上げることになり、その工場で作られた製品を包む梱包業者を探していたそうです。そこで父が手を挙げ、会社を興しました。友人の包装資材の会社を手伝っていたときにご縁ができたと聞いています」
蓄積されたノウハウを活かし物流のトータル提案を行う
会社が成長していくうえで、取引先が一社のみという状態は事業のリスクが高いと感じていました。そんななか、包装のノウハウが蓄積されたこと、取り扱う包装資材のクオリティが上がってきたことなどから立ち上げたのが、包装資材の販売会社「豊川東海資材」です。
「高度経済成長という時代背景もあり、運送会社をM&Aしたり倉庫を立ち上げたりしてグループ会社を増やし、梱包・運輸・倉庫と総合的な物流業へ移管していった、というのが父の時代の変遷です」
「トヨコンには営業マンがいませんでした」
明石氏は、大学卒業後、他社で5年間修行を積んだ後、1993年(平成5年)にトヨコンへ入社。そして2003年(平成15年)に父の跡を継いで社長へ就任しました。
「当時はまだ全体の約8割がミノルタの仕事でした。ちょうどその頃ミノルタがコニカと合併。円高の影響もあって、国内の製造業が海外へ製造拠点を移している時代です。これからさらに仕事は減少するだろうと予測していました」
それでも会社全体の売り上げを減らさないために、当時掲げた目標は「創業事業の売り上げを全体の5割にすること」。そのためには、新しい取引先との関係性を築いていかなければなりません。しかし、当時のトヨコンには、営業職がいませんでした。
「もちろん関連会社にはいましたが、トヨコン本体には営業マンがいませんでした。だから私が社長に就任してすぐ、現場係長から課長に抜てきした西村くん(現トヨコン専務)と一緒に、営業職の採用を始めたんです。採用のノウハウはまったくといっていいほどありませんでしたが、ご縁があって元気な20代が大勢集まってくれました」
採用にあたり明石氏がこだわったのは、「お客様ときちんと対話ができる人材」でした。
「お客様に必要なものを聞いて、それを提供するだけの『御用聞き』の時代は終わりました。これからはお客様の悩みや困りごとをうかがって、一緒に考え、最適な提案ができる人材が必要なんです。トヨコンには自社商品がありません。見方によっては弱みかもしれませんが、お客様に合わせてどんな提案だってできるという強みにできるんです」
今、その当時に採用した人材が、会社を支える幹部として活躍しているそうです。
「ずっと続いていく企業」を目指して
現在、一番好調なサービスは包装資材の販売です。なかでも、顧客の製品に合わせたオーダーメードの商品を作る包装設計分野は特に引き合いが多くなっています。
「他社にはない我が社の技術やノウハウがあるのはもちろんですが、対面販売に力を入れることで、営業がお客様の話を聞ける体制になった成果なのかもしれません」と明石氏は話します。
「5年後、10年後、20年後にも続いていく会社にしたい」という思いで、2006年からは新卒採用もスタートさせました。
「振り返ると、私自身が社長に就任してからやってきたことは、会社の未来を見据えることと、新しい人を採用すること。そして、しっかり人材を育成することですね。社員教育に関しては、一緒に育つという意味で『共育』と呼んでいます」
取引先は順調に増え、現在では、創業事業の取引比率は全体売上の1~2割ほど。売り上げに占める割合は減少しても、取り引きは続いています。明石氏は「50年以上も一緒にお仕事させていただけているのは、実にありがたいことですね」と笑顔を見せました。
物流業界を取り巻く環境とは
このように好調に業績を伸ばす一方で、将来的な危機感はあると明石氏は言います。
「現在、この業界は岐路に立っていると思うんですよ。日本はずっと製造業が盛んでしたが、今はそれが東南アジアなどの海外に移っています。また、自動車産業では電気自動車が普及すると、車の部品点数が現在の1/3になるとも言われています」
製造業が縮小すれば当然、包装や保管する製品も減ります。それゆえ、すでに包装資材は競合同士の安売り合戦が繰り広げられています。さらに、原材料や原油価格の高騰から、段ボール、プラスチック、ポリ袋などの製品はどんどん値上がりしています。
「安売りが強いられている最中、値上げ交渉をせざるを得ない。なかなか大変な状況です」
「お客様に本当に必要とされる物流を提供したい」と明石氏。“本当に必要とされる”とは、どういう意味なのでしょうか。
「僕らの仕事は段ボールを売ることじゃない」
「そもそも私たちの仕事って、『段ボールを売ること』ではないんです。ほとんどが製造業である我々のお客様の要望は、『自分たちが作った大切な製品を、安全確実に、かつできるだけ安く、自分たちのお客様のところに届いて欲しい』ということです」
この要望に答えられるのは、段ボールかもしれないし、ドローンかもしれない。もしかしたら、まだ見ぬ魔法のじゅうたんなのかもしれません。
「ただ現状は、輸送方法や強度、値段などを鑑みたうえで、段ボールが一番いいと考えて提案しています。つまり、お客様の事情をいろいろと聞き、商品の特性を知ったうえで最適なものを提案する。それが私たちの仕事です」
お客様と同じ方向を向いていきたい
現在、顧客の多くが人手不足という問題に直面しているそうです。そんな状況で多く引き合いがあるのが、省力化、省人化。つまりロボットです。
「弊社のロボット事業も、遅まきながら少しずつ実績ができてきたところです。それに若い社員は新しいことに意欲的にチャレンジするタイプが多く、ロボットやプログラミングなどの勉強会も意欲的に参加してくれています。新しい取り組みがいろいろとできそうな雰囲気が社内にありますね」
今はロボットが注目されていますが、これからもお客様のニーズは変わっていくだろう、と明石氏は指摘します。
「現在、お客様の一番興味があるところが省人化なので、弊社が注力するのもこの分野です。我々はこれまで培ってきた物流のノウハウを活かしつつ、これから先もお客様のお話を伺いながら、同じ方向を向いて柔軟に変わっていきたいと思っています」
ロボットが普及していくのか、全く別の新しい技術革新があるのか……、次にどうなっていくのか予測するのは非常に難しいです。
世の中が変わって行くなかでも、お客様と一緒に新しいことに挑戦し、新しい仕事をどんどん作っていきたい。「だからこそ、トヨコンは“人”で勝負していくんです」と明石氏はそう語りました。