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【SDGs思考の梱包資材】使い捨てプラスチック規制と新紙素材の可能性

【SDGs思考の梱包資材】使い捨てプラスチック規制と新紙素材の可能性

 
2022年初のテーマは袋です。
 
梱包や包装資材の中で、特にポリ袋と称されるプラスチック製の袋は、非常に重宝される包材の一つです。
第一次産業から第三次産業まで、多くの産業の様々なシーンで用いられ活躍しています。
 
その機能は防水性、耐油性、柔軟性、透明性、保管性、防臭性、密封性、無塵性、強度、軽量、耐候性など、
一つの素材で多くの機能を持ち、コストの優位性を含め、極めて優れた包材と言えるでしょう。

使い捨てプラスチック動向

日本の動向

数年前よりマイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的規模で顕在化し、生態系への影響が深刻化しており、プラスチック、その中でも特に「使い捨てプラスチック」に対して厳しい規制が施行され始めています。日本では2020年7月より、レジ袋の有料化が始まりましたが、2022年4月には、プラスチック製品の削減を企業などに求める「プラスチック資源循環法」が施行となり、対象12品目が政府閣議決定した旨の記事が1月中旬に掲載されました。ネットで少し調べてみても、世界中でその規制を確認することができます。

世界の動向

日本貿易振興機構(JETRO)によりますと、世界では遥か以前よりプラスチック製品に対して厳しい規制や制限が検討され、直近の施行実施が報告されています。
 
例えば、フランス商業・流通業連盟は2003年にプラスチック製レジ袋の削減に合意締結し、2016年7月より小売業におけるプラスチック製レジ袋が禁止。2017年1月には、生鮮食品包装用など、レジ袋以外にも適用拡大されています。2022年1月からは、例外はあるものの、小売販売の野菜や果物のプラスチック包装が禁止となりました。
 
その他の国では、ドイツは、小売りでのポリ袋(厚さ仕様で制限あり)の配布や販売が2022年1月より禁止となり、違反すると罰金が科せられるようになりました。オーストラリアでは、梱包材用発泡スチロールは2022年7月より、さらに、同年12月には、食品や食料への発泡スチロール、ポリ塩化ビニル商品ラベルが廃止など、挙げるときりがありません。JETRO”特集「急速に広がるルール作り」各国のプラスチック製品への対応”に詳細が記載されています。(参考記事:https://www.jetro.go.jp/biznews/feature/plasticwaste2019.html

環境に対応した新素材の開発活発化

日本ではポリ袋の代替え材として、バイオマスプラスチックが最も有名かもしれません。バイオマスプラスチックは、海洋汚染問題というより地球温室効果ガスの削減、つまり石油由来資源利用の縮減を目的に開発されてきた経緯があり、今や比較的容易に入手可能な素材となりました。日本ではレジ袋の有料化に伴い、バイオマス率25%以上であれば無償配布が認可されています。
 
また、紙材そのものによる袋は一時減少したように見えましたが、最近よく見かけるようになりました。2019年中ごろ、大手衣料系企業各社がレジ袋を紙化するといった話題がメディアで大きく報道されました。 
 
食品業界などでは、PE(ポリエチレン)などのコーティングを施して、密封機能や耐油性を付加した紙素材の袋を目にすることができますが、このように環境に対応した新素材の開発や上市が活発化しています。

様々な特殊性を持つ無塵性紙

プラスチックフィルムライクな特性を持つ少し特殊な紙材の紹介です。ここでは仮に無塵性紙(むじんせいし)と呼ぶことにします。
 
特徴の一部を列挙しますと、
・高気密性、王研式透気度試験において測定機器の検出限界以上
・高耐油性、KIT値12以上(7以上は耐油性ありと判定)
・紙粉が出にくい無塵性
・薄く半透明
・化石由来樹脂を含まない100%植物由来の素材
・紙材としてリサイクル可能
 
などが挙げられます。
 
               20220201_SDGs紙材1.jpg
 
下図①の写真は一般的なコピー用普通紙と無塵性紙表面を電子顕微鏡で100倍に拡大したものです。無塵性紙は一般紙特有の不純物(塩素、硫酸イオン、無機粉末など)は無く、紙粉が見当たりません。
 
        20220201_SDGs紙材2.jpg
                                     図①
 
下図②は、紙粉脱落評価後の電子顕微鏡拡大写真です。紙粉脱落評価試験:十字折した後、広げアルミホイルタワシで上下に10往復摩擦したものです。
 
        20220201_SDGs紙材4.jpg
                                     図②
 
無塵性紙は紙粉の脱落は確認できません。厚さは15μm~45μmと薄いものの社内評価試験では一般の紙より強いと判定されました。

紙材では異例の高値、耐油性

耐油性評価(TAPPI紙パルプ試験 キット法)において、紙材としては異例のKIT値12以上の数値を検出しています。包材以外の分野においても可能性を秘めた素材です。

帯電防止機能・撥水機能の付加

帯電防止機能を付加することが可能です。表面抵抗値は実測値で10の7~8乗Ω・cm(23℃、50%RH)程度と、一般のピンクやブルーの帯電防止タイプポリ袋と比較して同等かそれ以上の数値を確認しています。今後更なる評価を要す素材ですが、電子基板や電気機器など静電気を嫌う機器の包装として有望と考えています。さらに現在、撥水機能を持つ新たな素材の開発が進められています。
  
               20220201_SDGs紙材3.jpg

素材技術の可能性

この無塵化技術を用い、他の部材を無塵化できることも確認されました。下図③は市販されているパルプモールド製品に無塵化処理した拡大写真ですが、パルプモールドの表面に無塵層が構築された状態が確認できます。紙材への無塵化を確認していますが、他材への評価、研究は必要性や要求により継続予定です。
  
        20220201_SDGs紙材5.jpg
                                     図③

まとめ

無塵性紙は通常の袋以外には、食品系、医療系、電子機器、クリーンルームなど紙粉を嫌うシーンの包材として特に有効と考えています。生分解性などの特性も持ち、その可能性は無限。未来に向けて世界を変えられる素材かもしれません。
 
*無塵性紙は世界的なセパレータ企業であるニッポン高度紙工業株式会社の開発素材です。本材の包材化ほか、本材に関するご相談はトヨコンへお気軽にご連絡ください。

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参考:
「急速に広がるルール作り」各国のプラスチック製品への対応 | 特集 – ビジネス短信 – ジェトロ (jetro.go.jp)

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