レポート#6:SDGs入門編!SDGs思考の梱包資材を取り入れるポイント
2021年9月30日に「今日からはじめる!SDGs思考の梱包資材」と題し、勉強会を開催しました。ここでは、弊社 小田原営業所の原氏と包装設計課の白井氏が登壇した勉強会の内容をお届けします。この勉強会は、SDGs達成への取り組みとして、梱包材を見直したいけど何からはじめたらいいか分からない、という方を対象としています。SDGsへの取組みとして、企業が梱包材の領域においてどのような工夫ができるか?というポイントでご紹介していきます。
目次
・トヨコンが考えるSDGs思考の梱包資材―トヨコンの取り組み
・SDGs関連梱包資材例
・導入事例―事例1:自動車部品の内装材
事例2:発泡緩衝材のダンボール化
事例3:廃棄物削減
・まとめ
トヨコンは、総合物流商社の責として、包装資材販売、省人化事業を通じ、お客様や社会と共にSDGs達成を目指しています。そして2021年2月、持続可能なまちづくりとSDGs達成に向け、小田原市と共に取り組む「おだわらSDGsパートナー」として登録されました。数年前からSDGsに焦点を当てた梱包提案を模索し、お客様と取り組んできたことから、何かお手伝いができるのではないかと考え、参画しています。SDGsに関連する取り組みの継続的な推進のほか、SDGsの理念の普及などに小田原市と共に努めています。
まずは、SDGsと梱包材の関係について原氏が紹介しています。
トヨコンが考えるSDGs思考の梱包資材
ベクトル合わせとして、既にご存知の方も多いと思いますが、持続可能な開発目標(SDGs)は、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として策定されました。国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載され、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール、169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本としても積極的な取組みが求められています。
トヨコンの取り組み
トヨコンが考えるSDGs思考の梱包資材については、そのモノ自体が持つ社会的、経済的、環境的なあらゆる不平等/不都合/不条理/問題点などを改善することを目的として提案、用いられる梱包資材と定義付けていると言います。
具体的なキーワードは、下記画像の右側に掲載されているものです。SDGsや環境負荷の軽減の観点から見ると、近年の動向としては、2020年7月1日よりスタートしたレジ袋の有料化を思い浮かべる方が多いと思います。海洋汚染問題への取組みとしては、このような「脱プラ」が声高に叫ばれています。
脱プラは、SDGs目標の14に掲げられる「海の豊かさを守ろう」への取組みとして考えることができ、比較的想定しやすいものと思われます。しかし、SDGs思考の梱包材において脱プラだけがそこに当てはまるわけではありません。
キーワードにあるように、脱炭素や過剰梱包の見直し、輸送効率の高い専用設計資材への変更など取組みの手法は様々です。これについては、この後の事例紹介にて詳しく解説されています。
SDGs関連梱包資材例
原氏は具体的に、SDGsに対応した梱包資材について話を進めます。
●各種テープ
OPPテープを環境材テープへ代替化と考えた場合、クラフトテープ、ガムテープが候補として挙がります。
ここで大切なこととして、テープの仕様は万別あり、選定にあたりコストは重要ですが、必要な機能を確認して選定することを挙げています。また、本来のガムテープは「水を使う紙テープ」のことを指していて、最近では通販の包装に多く採用されているとのことです。
●紙製パレット
続いて、荷物の入出庫や保管時に幅広く使われている樹脂パレット。運送業界や物流業界では必要不可欠な道具ですが、破損した場合は廃棄処分になることが難点です。
対して、リサイクル可能な紙製パレット(ダンボールパレットやモウルドパレット)は、軽量物はもちろん、重量物にも耐えられる特殊な構造でできています。原氏によると、使用後はリサイクルできるというメリットから、近年は紙製パレットの需要が伸びているとのこと。
一方、デメリットとしては、紙でできているため、水や湿気に弱いことを挙げています。また、一点に重さが集中してしまうと耐久性が弱まるので、パレット全体にバランスよく荷物を積む必要があります。
●各種緩衝材
次に、気泡緩衝材やエアー緩衝材といった隙間埋めに、まだまだ外せないプラスチック。これについて原氏は、要求される部位や機能、条件により多くの紙材による代替候補があると言います。例を挙げていますので、一つずつ見ていきます。
・紙緩衝封筒
内部に網の目の封筒が入っている二重構造になっています。物を入れて奥に押し込むと、中の封筒がメッシュ状に伸びていき、ハニカム構造となって緩衝材のようなクッションの形に変化します。
・ボーカスペーパー
いわゆる半紙・新聞紙タイプのロール紙です。こわれやすい食器や瓶類の破損、輸送時の揺れによる家電製品への衝撃を防ぐこと、梱包時に生じる隙間埋めの用途として利用されることが多いです。
・エンボスペーパー
エンボス加工により紙にボリュームが加わり、凹凸自体に緩衝効果があります。
・クッションペーパー
使用時に引っ張ると立体的な網目状になる梱包材です。軽く広げて包むだけで、瓶・ボトル・ハーバリウムなどのこわれものを保護して、おしゃれなラッピングをすることができます。
・紙製緩衝材システム
クラフト紙をクッション性のある紙製緩衝材に即座に製造することができます。加工には接着剤を使用しておらず、100%紙製の環境にやさしい緩衝材です。
原氏は、紙製緩衝材システムについて「脱プラを推進したいけど作業性も良くしたい、多品種少量生産の重量物のため梱包に手間取っている、といった課題をお持ちの方におすすめです」と話します。(関連記事:紙製緩衝材システム – 物流改善・梱包材のことなら | 株式会社トヨコン)
●発泡プラスチック
おなじみの緩衝材である発泡プラスチックですが、製品形状に合わせたものや粒状のもの、シート状のものなど形や機能はさまざまです。優れた緩衝能力によって広く普及している発泡プラスチックですが、紙化することが可能です。では、どのような例があるのでしょうか。
紙化の例として、パルプモウルドやダンボール、さらには弊社がメーカー様の協力のもと開発した「ワッフルパッド」という立体構造を持つ紙緩衝材があります。このワッフルパッドについては、次の導入事例の中で詳しく解説しています。
導入事例
ここからは弊社 包装設計課の白井氏より、お客様へ実際にご案内した事例について紹介しています。
勉強会の冒頭で原氏が「SDGs思考の梱包材において脱プラだけがそこに当てはまるわけではない」と話していましたが、他にどのような取組みの手法があるのでしょうか。それについて、導入事例から見ていきます。
事例1:自動車部品の内装材
まず、専用設計資材の見直しをした、自動車部品の内装材の事例です。
・事例1-A
一見するとビフォー・アフターで何ら変わりがないようにも見えますが、実は製品の収容数が13個から16個となっています。内装材の形状を工夫し、一箱あたりの収容数が向上しました。
SDGsへの取組みとして梱包材を見直すとき、環境負荷の低い素材へ変更という考えにかたよりがちです。しかし、この事例のように既存の製品形状を見直すことで、積載効率の向上、さらに脱炭素への取組みに繋げることができます。
・事例1-B
続いての包装設計の見直しは、従来のプラスチックコンテナに化成品の組仕切りを組み合わせた仕様から、専用トレーに変更した事例です。
専用トレーにすることで、プラスチック使用量を削減することができる上、資材費も70%削減することができます。
白井氏は「お客様が必要十分な資材を選定することは意外と難しい事です。弊社には類例が多くありますのでお気軽にお問い合わせください」と話します。
事例2:発泡緩衝材のダンボール化
次に、ワンウェイの発泡緩衝材をダンボール化した、SDGs思考の梱包材の開発事例の紹介です。
・事例2-A
これは、ワールドワイドに製品を展開するIT企業様の事例です。製品自体点数が多く、ウレタンフォームによって全方向を個々に包装する仕様を採用していましたが、コストや保管エリア、環境的な問題があり、特に海外からの脱プラ要求が強く検討、開発をしました。
開発仕様は、一見普通のダンボールによる仕切り板構造体です。しかし、衝撃吸収やデリケート部位保護のため、一見では見逃す独自のカット処理がされています。全製品共通の集合梱包化を達成したことで、大幅なコスト削減や省スペース化を実現しました。
この「衝撃値低減仕切り」は輸送効率、保管エリア改善、リサイクル可という観点を評価され、2020年、優れたパッケージングを表彰する「日本パッケージングコンテスト」において受賞しました。
・事例2-B
次の事例は、家電などで多く採用されているEPS、発泡スチロールをダンボール化したものです。従来梱包サイズと同サイズで開発し、家電メーカー様指定の厳しい落下試験に合格しています。
これによって、年間でのCO2削減量は、原料採取ほか一部工程のCO2排出を含まない簡易計算で、およそ57%削減と算出されました。
・事例2-C
続いて、先ほど脱プラ資材例として挙げた「ワッフルパッド」についてです。
ワッフルパッドの開発前は、発泡プラスチック代替の梱包材として、ダンボールを折り曲げたり、切り欠いたり、組み合わせて環境対応材の提案を続けていたということですが、作業性や作業品質、衝撃緩衝性などいくつかの弱点がありました。そして、これらの弱点を補うべくメーカー様の協力の元、機械製造による立体緩衝材「ワッフルパッド」を開発しました。
ワッフルパッドは、様々な重量や形状の製品に適応可能で、実際に最大100kgほどとなる製品の梱包材として採用されています。落下試験での緩衝性能は、現時点で発泡プラスチック同等の評価があるとのことです。積み重ねての保管ができ省スペース、部材が少なく作業性や作業品質が良好など、梱包緩衝材に求められる機能の多くを達成しており、製品や梱包条件に合わせたフレキシブルな仕様が可能です。
ワッフルパッド検討の流れについては、以下の5つです。
1.ヒアリング
2.製造可否判定
3.設計、試作作成
4.修正、試作作成
5.納品
ヒアリングで製品の特性から求められる梱包条件を導き出す際、製品のCADデータがあると仕様確定がスムーズになります。メーカー様と製造可否判断をした後、設計、試作品の製作、落下試験を行います。その後、お客様との打ち合わせの中で修正を繰り返し、正式な仕様定義確定後、最終見積を提示します。
事例3:廃棄物削減
最後の事例は、ダンボールの廃棄物削減を目的とした例です。SDGsの取り組みというと、プラスチックから紙への変更をイメージしがちですが、これは1回使い切りのダンボール材から、繰り返し使用するプラスチックに変更しています。
トータルコストや作業効率、作業品質の向上、さらに顧客先での廃棄物削減、SDGsの目的ともなる資源の有効活用を実現しています。
まとめ
原氏と白井氏は、各事例のポイントをこのようにまとめています。
・現行の包装資材の見直し
まずは、使用頻度の高いテープ類などを見直してみてはいかがでしょうか。
・専用設計仕様の見直し
その梱包材は、製品にとって本当に最適な形でしょうか。積載効率が上がれば、脱炭素の促進に繋がります。
・1回しか使用しないものは紙へ
ごみになるものは、環境にやさしい素材にシフトしましょう。
・繰り返し使用するものはプラスチックへ
資源の有効活用、という視点から考えれば、脱プラ以外の選択肢も見えてきます。
皆様一人ひとりの行動がSDGs達成への道筋となります。弊社ではSDGs思考の梱包材を通じて、お客様と一緒にその活動をお手伝いさせていただきます。
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