レポート#12:RFIDをフル活用!課題解決法や導入時の注意点は?
2022年1月27日、『おさえたいポイント「RFIDを導入するには?」』を配信しました。この勉強会は「どうやって使う?RFIDでできること」の後編として、RFID導入時に抑えておくべきことについて弊社 システム販売課の佐野氏が解説しています。
目次
・活用事例―・金属部品への添付はタグを吊るして解決
・運用面の見直しで必要なタグだけを一括読み取り
・RFIDタグの粘着糊変更で取り外しを簡単に
・検討段階における注意点と課題―・RFIDタグの選定
・RFIDリーダーの選定
・導入時の注意点
・導入後の課題
・まとめ
RFIDは電波を利用して情報の読み書きを行う仕組みで、様々な場面で導入されています。製造、物流業務ではゲートアンテナを使った製造工程管理や、倉庫における棚卸などの在庫管理などがあります。
活用事例
勉強会前編をまとめた「レポート#11:2日がかりの作業が10分で完了!RFIDの活用法とは?」でご紹介した事例をもとに、課題とその対策についてみていきます。
金属部品への添付はタグを吊るして解決
はじめに、付帯作業を改善した事例です。佐野氏によると、以前は部品の管理ができておらず、専任者がいなければ必要な部品を探し出すことができない状態だったといいます。そして保全部品にRFIDタグを添付することで、どこに何があるのかが分かるようにして作業を標準化しました。
しかし、RFIDタグは金属に接触していると読み取ることができません。そこでRFIDタグを短冊のように加工して部品にぶら下げることで、直接金属に触れないようにしたといいます。さらに佐野氏は「この事例では金属対応タグを使用しなくても管理できるようになっている」と話します。
運用面の見直しで必要なタグだけを一括読み取り
次に、工程進捗管理の事例です。RFID導入前は、バーコードを使用した管理でバーコードの読み忘れや、事後登録などが行われていたため、正確な実績管理ができていないという状態。RFIDに切り替えで一括読み取りが可能となり、管理工数の大幅な削減ができました。
ここでの課題は、RFIDリーダーは周辺にあるRFIDタグをすべて読み取ってしまうことです。佐野氏によると、本来読み取りたくないものまで読み取ってしまうため、製品を運ぶ動線を見直したといいます。これにより登録すべきRFIDタグのみを読み取ることができました。RFID側の仕組みではなく、運用面の対策で課題を解決した事例です。
RFIDタグの粘着糊変更で取り外しを簡単に
最後に、在庫管理の事例です。そもそも在庫管理の仕組みがなく、棚卸をしなければ在庫数がわからないという状態を、製品にRFIDタグをつけることで解決します。
この際の課題は、運用コストをミニマムにするため、出荷のタイミングでRFIDタグを回収、再利用していることです。佐野氏は「製品にRFIDタグを直接貼ってしまうと、回収が困難となるため、簡単に回収できる方法を考える必要があった」と話します。そして、RFIDタグの粘着糊の変更と、台紙の特殊加工を行うことにします。RFIDタグを付箋のように貼付することで、簡単な回収作業を実現しました。
これまでの3つの事例では、RFIDの検討段階で問題を洗い出すと同時に、解決策を導き出すという作業を繰り返しています。
検討段階における注意点と課題
RFIDを利用したシステムを導入する場合、どのような流れになるのでしょうか。佐野氏によると、要件のヒアリングから設置、導入まで、大きく10個のフェーズがあるといいます。
まず、検討段階で考えなければならない「RFIDタグの選定」と「RFIDリーダーの選定」そして、選定されたRFIDタグと機器を持ち込んで行う「現場検証」について説明しています。
RFIDタグの選定
佐野氏は「目的に対して正しいRFIDタグが選定されていることが一番のポイント」と話します。RFIDの弱点は金属や水など。この弱点をカバーするために金属対応タグなど、様々なRFIDタグがあるといいます。
RFIDの弱点とは具体的にどういうことか、テストして紹介しています。
1.ダンボール箱への収納
ダンボール箱の中へRFIDタグを入れてフタをする。
→電波は遮断されることなく、読み取りができる。
2.金属ケースへの収納
金属ケースの中へRFIDタグを入れてフタをする。
→電波が遮断されて読み取りができない。フタを開ければ読み取りは可能。
3.金属への貼付
金属部分にRFIDタグを貼付する。
→金属に触れているため読み取りができない。
4.水没
RFIDタグを水へ入れる。
→電波が吸収されているため読み取りができない。
RFIDリーダーの選定
RFIDリーダーは作業工数の削減効果の大きさに影響します。佐野氏によると、選定のポイントは業務要件が求める読み取り距離です。距離によってリーダーの出力やRFIDタグの大きさなどが決まります。
現場検証では、選定したRFIDタグとRFIDリーダーを実際の現場に持ち込み、読み取りテストを行います。読み取りテストの絶対条件はすべてのRFIDタグが読み取れること。すべてのRFIDタグが読み取れない場合、電波干渉の確認を行い、問題がみられない場合はRFIDタグやRFIDリーダーの選定をやり直すことになります。
導入時の注意点
佐野氏は事前検討の段階でよく見落とされる事項が大きく3つあるといいます。ではその事項とはどのようなことなのでしょうか。
一つ目は電波干渉です。UHF帯のRFIDは無線LANと干渉し、複数のRFIDリーダーを近接運用している場合に相互干渉がおこります。これは導入後にある、問合せの一つだといいます。
二つ目は電波出力です。1Wの高出力RFIDリーダーを使用するには総務省への電波利用申請が必要となりますが、この申請はお客様自身で行っていただく必要があります。
三つ目はRFIDタグのアクセス方式です。このアクセス方式によってRFIDタグの価格は変わります。先に紹介した在庫管理の事例ではRFIDタグへの書き込みが必要ないため、読み取り専用のリードオンリーを選定しています。一方の進捗管理の事例では、再利用時に書き換えを行うため、書き込み回数に制限のないリードライトです。
導入後の課題
佐野氏は「導入後の問合せで一番多いのが、読み取りに関するトラブル」と話します。前述したようにRFIDリーダーは電波の届く範囲に存在するRFIDタグをすべて読み取ります。そのため読み取りが必要ない対象物がある場合は、RFIDリーダーの出力を弱めたり遮蔽物を設けたり、読み取れない工夫が必要です。
また、RFIDタグが読み取れない原因のひとつにチップクラッシュがあります。クラッシュしたRFIDタグは当然、読み取ることができないため、システム上では「読み漏れ」となります。このような読み漏れはそもそも気づかない、また、気づいても特定することは困難です。このことからRFIDの仕組みを検討する段階で、読み漏れなどのトラブル時の対策を検討する必要があります。
まとめ
3つの事例を挙げてそこでの課題や、よくある課題、注意点をご紹介しました。
最も多発する読み取りに課題が発生した場合の解決方法として、以下の方法があります。
・金属部分にタグが触れないようぶら下げる
・一括読み取りをしない場合は製品を運ぶ導線を見直す
・タグを回収し再利用する場合は粘着糊の変更をする
RFID導入は、導入を目的とするのではなく、現状の把握により解決すべき課題を洗い出すことが重要です。RFIDの導入が適切なのか、本当に課題が解決できるのかを検討することから始めてみてはいかがでしょうか。
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