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【SDGs思考の梱包資材】紙の常識から外れた紙「微塵蜉蝣」

【SDGs思考の梱包資材】紙の常識から外れた紙「微塵蜉蝣」

「微塵蜉蝣」はトヨコンがニッポン高度紙工業社様と取り組む環境対応包装資材です。ブログ記事「使い捨てプラスチック規制と新紙素材の可能性」で紹介した包装資材ですが、世界的なプラスチック規制強化とも重なり、国内外の多くのお客様より問い合わせを頂きました。
「微塵蜉蝣/ビジンカゲロウ」と命名しました。微塵蜉蝣にはどんな特長があるのかをご紹介します。 

紙の常識から外れた紙

「微塵蜉蝣」は一般的な紙と少し違う特徴を持ちます。
・極低発塵性(紙粉が出にくく高負荷においても低発塵性)
・高耐油性(紙単独では異例のKIT値12以上)
・半透明 (内容物の確認が可能)
・高密封性(王研式透気度試験において検出限界以上)
・高温高湿耐性(60℃/90%RH 144Hrのエージング評価で物性劣化認められず)

その他

・生分解性
・極薄(紙厚25μm、40μm、34μm、54μm:の4種)
・植物由来成分(主成分はセルロースマイクロ・ナノファイバー)
・古紙リサイクル可能
・帯電防止+ヒートシール機能を付加可能 表面抵抗率:1x109~10[Ωsq.]など有しています。 

紙粉が出にくい極低発塵性

微塵蜉蝣は極めて紙粉が出にくい構造を持っています。[図1]、[図2]は素材に負荷をかけ、紙粉の発塵状況を市販のクリーンルーム専用紙と比較したものです。
[図1]段ボールとこすり合わせた時に発する紙粉状況(特殊カメラで可視化し観測)
微塵蜉蝣1.png 
[図2]A4サイズ紙を団子状に丸め60回握りつぶした後広げた時と再度握りつぶした時の紙粉発生数
微塵蜉蝣2.png
*発塵量測定データはある特定環境下における実測値でありご参考値です。保証するものではありません。 

紙としては異例の高耐油性

耐油性紙は一般的にはフッ素やろうを塗布したものやプラスチックフィルムをラミネートしたものなど紙以外の油をはじくような耐油性の物質が付加されています。しかし、微塵蜉蝣紙は、紙そのものです。紙だけで耐油性を謳う素材はあまり聞きません。

微塵蜉蝣は耐油性試験JAPAN TAPPI No.41(紙及び板紙―はつ油度試験方法―キット法)に準じた測定において、測定限界のKIT値12以上と紙単独としては異例と言える高耐油性を持ちます。 

空気を通しにくい高密封性

さらに微塵蜉蝣は、フィルムや紙材などの透気度を評価、測定する王研式透気度試験において”検出限界以上”を示し、紙材として稀な高密封性を持ちますが、これらの高耐油性や高密封性は一般の紙と異なり紙繊維が極微細でかつ強固に密着しフィルムライクな構造を成すことによるものです[図3]参照 

[図3]表層面(電子顕微鏡で250倍拡大観察)
        《微塵蜉蝣》                 《市販クリーンルーム専用紙》
微塵蜉蝣3.png

[図4]透明性イメージ(紙厚54μm)
sub5.png

ホコリや静電気を嫌う製品に帯電防止機能付加材

微塵蜉蝣は帯電防止機能とヒートシール機能を付加した標準素材があります。表面抵抗率の実測値は1.0×10の9~10乗Ωsq.(23℃、50%RH)。市販のプラスチック製帯電防止袋と同等か以上の値です。

[図5]
微塵蜉蝣5.png

高温高湿耐性

温度60℃、湿度90% 144時間の高温高湿度エージング評価(結露しない)において軽微な波うちを観測。張り付きや色味変化はなし。物性(厚さ、坪量、引張強さ、突刺し強さ、ヒートシール強度、表面抵抗率)の変化は無し。

[図6]高温高湿度評価エージング状況

微塵蜉蝣6.png
*但し本結果は評価室のある環境下における結果であり保証するものではありません。 

紙の新時代へ

微塵蜉蝣は普通の紙と同じで水に弱く、伸びもなく容易に破れます。古紙としてリサイクルが可能、万が一河川や海洋へ流出してもマイクロプラスチックは発生しません。しかし、紙の常識を超えた特異な特徴は「紙は使えない」想定の食品分野や医療分野ほか様々なシーンの環境包材として可能性ある未知数の素材です。

最後に「微塵蜉蝣/ビジンカゲロウ」の名称由来について

「微」は国際単位micro(μ)の漢数字表記、「塵」はnano(n)の漢数字表記です。微塵蜉蝣原料がマイクロファイバーやナノファイバーのセルロースであることに由来し、「蜉蝣」は微塵蜉蝣の元祖となる世界で最も薄い紙とされる「土佐典具帖紙」の別名“かげろうの羽”に由来します。

*「微塵蜉蝣」は世界的なセパレータ企業であるニッポン高度紙工業株式会社様の登録商標です。本材に関するご相談はトヨコンへお気軽にご連絡ください。 

2023年版世界のSDGsランキング発表

2023年6月「2023年版 世界のSDGsランキング」が国連の非営利研究機関SDSN(持続可能な開発ソリューションネットワーク)より発表されました。上位ランクはSDGs開始当初よりEU主導で各国が素早く取り組んだヨーロッパ諸国が占めました。日本の達成状況は一部良好な項目があるもののゴール5(ジェンダー平等を実現しよう)、12(つくる責任、つかう責任)、13(気候変動に具体的な対策を)、14(海の豊かさを守ろう)、15(陸の豊かさも守ろう)の5つの目標において4段階評価中、”深刻な課題がある” の最低評価が下されました。 

またゴール2(飢餓をゼロに)、13(気候変動に具体的な対策を)、14(海の豊かさを守ろう)、15(陸の豊かさも守ろう)、16(平和と公平をすべての人に)の5つの目標において進捗無しを意味する”停滞” の評価です。それでもOECD加盟国166か国中の21位、G7国で4位の結果は全体達成度の低さを実感します。経済大国である米国39位、中国63位、インド112位。

微塵蜉蝣7.png
日本のSDGs達成状況。アイコン背景色が緑「達成済み」、黄「課題が残る」、オレンジ「重要な課題がある」、赤「深刻な課題がある」(出典:Sustainable Development Report 2023 p.290)

報告書は”2030アジェンダに対し大きく外れている(遅延している)”と強い危機感を示し深刻な状態を警告しました。「地球温暖化」が「地球沸騰化」へと変わり地球蒸発への時間的猶予はないようです。

参考:Sustainable Development Report 2023

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