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環境改善の第一歩:中小企業視点でのSDGs推進の現況と即時行動の重要性

環境改善の第一歩:中小企業視点でのSDGs推進の現況と即時行動の重要性

各国各企業がSDGs活動への取り組みを着々と始め、弊社も日本の中小企業として包装・物流を通して環境へ貢献を考えながら活動しています。今回は弊社の取り組みの中でも独自の商材である【微塵蜉蝣(ビジンカゲロウ)】をピックアップし、トヨコン目線で現在のSDGs状況と今何をすべきなのかについて考察していきたいと思います。 

欧州におけるリサイクルの現状

欧州(EU加盟国)では2025年までに、一般廃棄物と包装廃棄物のリサイクル率について、各材料ごとに数値目標が設定されています。もちろん各企業はこれらの新しい環境基準に適応していく必要があるのですが、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2023年6月に発表した記事によると、多くの加盟国がこの目標を達成することが困難であるとの見方が示されており、特にプラスチックのリサイクル目標については、19の加盟国が達成が困難な状況にあるとされています。 

将来への展望

欧州に限らず、日本の企業もプラスチックリサイクルの進展には、コスト、品質、納期などの課題に悩まされています。私たちがお客様に包装材のSDGs改善を提案すると、多くは「将来的に変更を検討するべきだが、現時点では現行の資材を使用しても問題ない」との回答を受けることが多いです。 
 
取り組まなければならない事とは理解しているけれど、日々の業務や他の課題に追われていると、前述の様々な課題点が高い壁となって立ちはだかり「いつか、いずれ」という言葉で問題を先送りしてしまう。しかし、お客様も頭のどこかで気付いてはいるのです。本当は──今から取り組むべきである、という事を。 

「今」行動する必要

包装材の仕様変更を検討する際には、以下のような多くのステップが必要です。
・課題の抽出(改善対象工程・部材の選定や条件定義) 
・サプライヤー・製品の選定 
・概要レベルでの性能・品質の擦り合わせ 
・実物サンプルの入手 
・効果測定としての性能・品質評価(強度・環境耐性など) 
・サプライチェーンの確認、コスト交渉 
・社内外のコンセンサス調整(顧客への荷姿変更申請など) 
・発注・納品 

これらの準備には、状況によっては半年以上の期間が必要となることもあります。2025年までの時間は「まだ1年ある」とも「もう1年しかない」とも受け取れますが、今すぐ切り替えをする必要は無いとしても『検討』については今すぐにでも取り組まなければならない、と思いませんか?  

ポリ袋のリサイクルと脱プラ

私たちは包装リサイクルの分野において、ポリ袋の代替品がまだ完全に確立されてはいないと感じています。現在、再生ポリ袋やバイオマスポリ袋が人気を博していますが、将来的に多くの企業が再生プラスチックを使用するようになった場合、再生材料が不足する可能性があります。これにより、メーカーや商社間での材料争奪戦が起こり、価格の高騰や納期の遅延の可能性が懸念されます。このような状況を考慮すると、プラスチックリサイクル製品にもまだまだ解決すべき課題や検討の余地があると考えられます。 

プラスチックリサイクルの課題の一つにリサイクルの複雑さが挙げられます。プラスチックにはPE、PP、PETなどの複数の種類があり、リサイクル方法にはマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなどが存在します。マテリアルリサイクルは原則として同じ素材同士でなければリサイクルは難しく、異素材同士はケミカルリサイクルを利用してプラスチック製品を製造する事が出来ます。
 
そして日本では多くのプラスチックがサーマルリサイクル(焼却時のエネルギーを利用する方法)によってリサイクル処理をされていますが、欧州ではサーマルリサイクルはリサイクルとは見なされず、リサイクル率の算出からは除外されています。 
 
そこで、私たちはポリ袋の代替選択肢のひとつに『紙』を利用した脱プラスチックを提案します。 

微塵蜉蝣(ビジンカゲロウ)

微塵蜉蝣の開発コンセプトは「今後欧州でプラスチックが規制されていく中で、電機・精密部品の分野で使用されているポリ袋の代替品となるものを紙で実現したい」というものだったと開発メーカーであるニッポン高度紙工業様のお話を伺った事があります。 
そんな背景から、紙としては世界最高水準の低発塵性を持ち、帯電防止の機能も付与できる微塵蜉蝣が開発されました。 

プラスチックに比べ紙のリサイクルは比較的容易である事から、プラスチックを紙で代替する事でプラスチックの再利用管理が不要になり、紙の再利用管理を行う事で管理工数の負担が軽減されます。 
(もちろん紙であれば全てリサイクル出来るわけではなく、中には禁忌品も存在しますが、閑話休題) 
プラスチックを使用しない紙のリサイクルシステムが確立されているのであれば、将来的にはEU以外の他の国や地域でプラスチック規制が決定した場合でも対応できる可能性は高いと考えています。  

ポリ袋の代替品を検討する際、まず機能として中身の視認性の良さと製品へ異物が付着しない事が求められます。 見た目がほぼプラスチックフィルムのようなセルロースナノファイバーはバイオフィルムであり、高い透過度を誇ります。しかしながらこれは非常に高価な材料の為、ポリ袋の代替品としては現行コストと大きく乖離があるのが実情です。 
セルロースナノファイバーを採用するにはコストという意味で高い壁が立ちはだかるでしょう。 

では、紙を利用したらどうなのか? 
紙である以上、紙粉は必ず出ます。紙粉をゼロにするのであれば表面をポリエチレンなどでコーティングしてしまえば良いのですが、脱プラ視点では本末転倒となってしまいます。ポリ袋の代替品として使用できそうなレベルの低発塵性の紙にはどんなものがあるのか? 

我々が知る限りでは、極めて発塵性が低くポリ袋の代替品として使用できそうなものは「グラシン紙」か「微塵蜉蝣」のふたつ。とりわけ微塵蜉蝣の発塵性は弊社内での試験結果ではグラシン紙の約3分の1程度を記録しており、紙の中ではトップクラスの低発塵性を誇ります。 
一見するとオーバースペックと感じそうですが、実際その微塵蜉蝣でもごくごく微量な紙粉は発生します。紙である以上紙粉は必ず発生する、それならば極力少ないものを選ぶ事が最も不良リスクが低く、製品の品質安定に繋がると私たちは考えます。

さいごに

今後も欧州に限らず、さまざまな形で環境活動における規制や目標設定がなされていく事は想像に難くはありません。 そんな時にすぐに現行の包装材仕様を切り替える事は難しいですが、だからこそ『検討』は今すぐにでも行っていく必要があるでしょう。選択肢は多ければ多いほど先々の想定外の可能性を抑える事に繋がります。 
 
出来る事、出来ない事を一つずつ明確にして出来る事から実施しつつ、出来ない事をどうやったら実現できるようになるのかをお客様と共に創り上げていく事が我々のミッションです。 
今すぐは無理だけれど、いずれは……と感じているのであれば──検討するのはもちろん「今」です! 
皆様からのお声がけを心よりお待ちしております。 

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参考:
JETROビジネス短信「欧州委、多くの加盟国で2025年までの再使用・リサイクル目標の未達成の恐れを指摘」 

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